Masuk「……!何をしているんだ!」
湊はそう言って駆け寄り、私の振り上げた手を掴む。
「くるみに手を上げるなんて……これはどういう事なんだ?」
湊の声は冷たく、そして私の言い分なんてどうでも良いと思っているのが伝わって来る。私の手首を掴んだその手には、異常な程に力が入っていて、それが私に対する怒りなのだろうと容易に想像出来た。
「いつからここに居た?正気なのか?自分が今、何をしようとしていたのか、分かっているのか?」
矢継ぎ早にそう言い、私の手を払う。私は力いっぱい払われた事で体のバランスを崩し、倒れ込む。反射的に湊を見る。湊はまるでお姫様を守る騎士のように私の前に立ち、背後の愛沢くるみを守っている。湊の背後では私を見下すように歪んだ微笑みを見せる愛沢くるみ。
仮にも。
私は湊の妻で、流産したばかり。そんな自分の妻を気遣うどころか、別の女を自分の妻から庇う夫。
しかもこの人はさっきまで愛沢くるみの妊婦検診に付き合っていたのだ。
私が流産の処置をしていた時に、この人は自分の妻を放り出して、他の女のお世話をしている。
私に自分の子供を産む資格なんて無いと言い切った男……。
その男に守られている彼女は私に対する悪意を隠しもせず、私を嘲笑った。
もう全てがどうでも良いと感じた。
「湊」
私は蔑むように私を見ている湊の視線、そして嘲笑っているくるみの視線を受け止め、彼らの目を見ながらはっきりと言う。
「……離婚しましょう」
◇◇◇
私の家、湊の家、そして颯太の家は昔から家同士の付き合いがあり、いわば幼馴染だった。一方で愛沢くるみは私の家、佐伯家に仕えていた家政婦の娘で私とは同い年だった。
幼い頃から一緒に居るとは言え、愛沢くるみは使用人の娘で、私や湊、颯太とはやはり扱いが違っていた。けれど愛沢くるみはその愛くるしさで湊や颯太からは可愛がられていたし、いつも怯えたように彼らの後ろをついて回っている、守ってあげなくてはいけない小さな白い花のような存在だった。
私は幼い頃から湊の事が好きだった。
けれど、いや、だからこそ、分かっていた。
湊と颯太の視線が向けられていたのは愛沢くるみだった事を。
愛沢くるみはか弱くて、いつも何事も決められなかった。だから時には湊が、時には颯太が愛沢くるみの手を取って、その手を引いた。愛沢くるみはいつも誰かに手を取られ、守られながら生きて来たのだ。
対して私は幼い頃から自分の事は自分で、と躾けられていた。使用人の居るような家だったけれど、身の回りの事は自分でやる、そんなふうに躾けられた。だからなのか、私は自分で自分の事は決める事が出来たし、手を引かれなくても歩く事が出来た。だから私には愛沢くるみの在り方は真似が出来ないと思っていたし、実際にそうだった。
そのうちに私の家、佐伯家と湊の家、久遠家に縁談が持ち上がり、私は湊と結婚する事になった。
そして同じタイミングで颯太と愛沢くるみも結婚した。
私は愛沢くるみが颯太と結婚すると聞き、胸を撫で下ろした。これでやっと、湊は愛沢くるみと離れられる、と。私と結婚したのだから、これからは愛沢くるみでは無く、私を見てくれる、と。
結婚してすぐの頃は穏やかで幸せと言って良い日々だった。二人とも医学会ではそれぞれの分野で成功を収めていた。私は救命医として、湊は脳外科医として、輝かんばかりの功績を収めていたのだ。
けれどそんな幸せな時間は長くは続かなかった。
颯太が事故に遭ったのだ。
事故に遭った颯太が搬送された病院は、私と湊が勤めていた聖カトリーナ国際医療センター。私は救急救命医として、颯太を担当した。
結果として私は颯太を救う事が出来なかった。
ERで立ち尽くす私、そんな私を睨み付ける愛沢くるみ、そこへ駆け付けて来た湊……。
愛沢くるみは湊に縋りつきながら、私を指さし、言ったのだ。
「彼女は救急医療のスペシャリストなんでしょう?なのに何で颯太を助けられなかったの!」
その言葉は私と湊の間を切り裂くのに十分だった。湊は私を見てその瞳に冷たさを宿し、あたかも自分の親友を殺したのは私だとでも言うかのようだった。
当時の私はそれでも思っていた。颯太の死の責任は私にあると。その裏でうごめく悪意に私は気付く事が出来なかったのだ。
――本当は颯太は助かる可能性があった事、そしてその可能性について、当時知っていたのは愛沢くるみだけだった。
颯太の死後、颯太の事故の経緯が世間に広く伝えられ、見出しが躍った。
~天才医師・久遠燈の失敗!ずさんな管理体制とその手腕の嘘~
~久遠燈が起こした医療過誤!その真実とは?!~
院内での調査では「事故」と結論付けられたが、世論は違っていた。そして私自身、罪悪感に苛まれ、颯太の死から逃れる事が出来なかった。
だから私はメスを置いたのだ。
そして家庭に入る事を選んだ。
それからの二年、ずっと自分の全てを湊に捧げて来た。何も求めず、良き妻である事。決して出過ぎた真似をせず、湊のサポートに全身全霊を傾けて来た。
――けれど今日。
私は思い知ったのだ。
自分の譲歩も、犠牲も、決して湊の心を溶かす事は無かった事を。そして最愛になる筈だった私の子供は、愛沢くるみと湊にとって、ただの供物に過ぎなかった事を。
「情報が漏れている可能性があるとすれば、そこは一体、どこなのか……」遼大がそう言って考え込む。賀神さんが慎重に口を開く。「EMSOの内部に千堂弘側と繋がりがある可能性があるとすれば、それは八重樫一晟になりますが、彼は既に我々に囚われていて、協力的でもありますからね……他にEMSOの方で外部との連絡を取っていると考えられる者は今のところ、皆無ですが」賀神さんにそう言われて、私も考える。「もしかしたら聖カトリーナの方に居るかもしれないのよね」私が呟くようにそう言うと、遼大も独り言のように言う。「確かにな、可能性としては無くはない。俺たちが管理出来てない事と、やはり外部からの流入がしやすい面はある」聖カトリーナは病院だけに、一般の外来患者さんだけでもかなりの数になるし、入院している患者さん、その関係者、そして病院側のスタッフ、清掃員までを含めると膨大な数になる。どの人もアクセスが可能な訳では無いけれど、不可能でも無い。「EMSOの方は俺が責任者権限で全てのログを集めよう」遼大がそう言う。「聖カトリーナの方は久遠先生にお願いしてみましょう」賀神さんがそう言う。「そうね、湊に頼んでみるわ」私はスマホを取り出して、前回の事を考慮に入れた情報漏洩の可能性についてメッセージを送る。湊からはすぐにメッセージが返って来る。『了解した。こちらで調べてみる。任せてくれ』車が進んで行く。日が完全に落ち切っている。藤堂氏の手配してくれた部隊の人の無線が引っ切り無しにそれぞれの部隊の動向を報告している。◇◇◇ピッ、ピッ、ピッ……電子音が響くラボの実験室。検体は既に動けないようにしてある。この実験室に入って来る手前。私は入る前に足を止めた。何故ならそれは実験室の中から聞こえて来る声に興味が湧いたからだ。実験室の中からはこんな声がした。「待っててくださいね、もうすぐです……もうすぐあなたは無垢な状態になる……そうなればあなたは僕のものです……僕がここから救い出してあげますからね……」チラッと実験室を覗く。あの男は……名は何と言ったか……忘れてしまった。確か、かなり前から私の元で働いている。私は自分の研究以外に興味が無いので人の名など覚えたりはしないし、今までそれで困る事も無かった。顔が傷だらけの男……だが体格は良く、使い勝手が良かったと記
私たちは千堂弘の居るであろう第七区画へ行く準備を速やかに行った。それぞれが連絡を入れたりする中で遼大が言う。「藤堂氏には俺から連絡を入れる。うちの人員との連携もあるからな」遼大はそう言いながら用意されていたタクティカルスーツに身を通す。私も着替えながら遼大に言う。「湊へは連絡を入れておいたわ。バックアップに回ってくれるそうよ」遼大がスマホを確認している間、既にタクティカルスーツの着用を終えていた賀神さんに聞く。「賀神さんの方は大丈夫なの?」そう聞くと賀神さんが苦笑する。「心配はされてますが……大丈夫です」こういう事態になって、初めて一緒に“出陣”するのだから仕方ないだろう。しかも現場に行くとなれば、最悪の状況も考慮に入れなくてはいけないのだから。不意に私のスマホが鳴る。見れば湊からメッセージが来ている。『藤堂氏との連携完了、御堂院家からの協力の申し出アリ』それを見て微笑む。「東都メディカルも協力してくれてるみたいね」私がそう言うと賀神さんが頷く。「静香が指揮をとってます」そう言われて私は頷き、言う。「頼もしいわね」髪をひっ詰めて、一つに結ぶと遼大が私の頭をポンと撫でる。「行けるか?」そう聞かれて私は頷く。「えぇ、行けるわ」遼大は微笑み、言う。「藤堂氏の方とも連携がとれた。すぐに人が来る」◇◇◇車での移動を開始する。私たちが乗っている車両には他にも数人の人員が乗っている。遼大の部下の人たちと藤堂氏の手配で来てくれた“公的機関”の人たちだ。藤堂氏が事前に話を通しておいてくれたお陰で、連携はスムーズだった。「様々な危険を考慮に入れて、我々は動きます。最初の突入は我々が先陣を切りますので、ご了承を」そう言われて私たちは頷く。ベイサイドパイロットプラントに突入した時もそうだったから、何となく手順は分かっている。数台のバンが連なって走っている。「どんな場所なのかしらね」私がそう言うと、遼大がタブレットを見せてくれる。「事前に入手した第七区画の平面図だ」ざっと見るだけでも、かなり大きい。「かなり大きいわね」そう言うと遼大が頷く。「あぁ、規模が大きいからな」遼大はそう言いながら私と賀神さんにタブレットを見せながら言う。「今回俺たちが狙いを定めているのは、ここ」そう言って平面図を指差す。「構造上、ここが
送られて来たデータを聞き直す。確かに賀神さんの言う通り、私たちが話しているその奥で、鉄工所などで良く聞く分厚い鉄鋼などがぶつかり合うような音と、船の汽笛の音がしていた。本当に私たちの声に混ざったその音を聞き逃さなかった賀神さんの耳はすごいと思った。「本当に聞こえるわね」私がそう言うと遼大がクスッと笑う。「賀神は昔から耳が良かったよな」そう言われて賀神さんが笑う。私たちは気を引き締めて、千堂弘からの電話の音声を元に色々と導き出した。この時間に出港した船の場所。そして鉄鋼のぶつかり合うような音がどの程度の距離なら聞こえるのか。それらの情報と私たちが三か所にまで絞った候補地を合わせてみる。合致したのは一か所。「ベイサイドパイロットプラントの中……第七区画にあるこの建物だな」遼大が地図上でその建物を指差す。「えぇ、そのようね」私がそう言うと、賀神さんが何かを調べ始める。「その建物はミラトリウム製薬の保管庫兼研究所にもなっているようだ」賀神さんは自身のタブレットを私たちに見せてくれる。「研究所……」私はそう呟き、あのベイサイドパイロットプラントや、千堂弘の家のあのラボを思い出し、ゾッとする。一体、そのラボで何が行われているのだろうか。それを想像するだけで背筋に悪寒が走る。「おそらく、千堂の居る場所はこの第七区画だな」私たちは顔を見合わせる。「行こう」誰からともなしにそう言う。◇◇◇高嶺さんから連絡が入った。千堂弘の居場所を特定出来たかもしれない、と。俺はその場所を聞き、加山さんに連絡を入れる。「念の為、燈と高嶺さんのGPSを追ってくれ」俺がそう言うと加山さんが言う。『かしこまりました』俺は歩き出しながら考える。これは俺も一緒に行くべきだろうか。高嶺さんは燈と賀神さんを連れている。これ以上、人員が増えたら負担だろうか。それでも俺も行きたいと思った。愛沢くるみがその体に何をされているのか、どんな処置がされているのか。千堂弘は愛沢くるみの体内に一体何を見つけたのか。千堂弘は天才だが、燈や高嶺さん、そして賀神さんも天才の部類の人間だ。俺は脳外の世界の中では天才とも言われていたが、今はその自信が無い。本物の天才たちをこの目で見たからだ。(俺も小さい人間だな)そう思い笑う。きっと千堂弘がどんな処置をしていても
「それで? 俺たちはどこへ行けば?」遼大がそう聞く。電話の向こうで千堂弘が笑う。『すぐに来て頂く訳にはいかないのですよ、私の方もこれからその施術をするので』そう言われた遼大が腕時計を見る。「どれくらいの時間が必要なんだ?」遼大がそう聞く。カチャカチャと金属の器具の音がする。『そうですねぇ……前回よりも時間がかかるのを考慮すると、一時間、ってところですかねぇ』タイムリミットが切られた。一時間……しかも出来るだけその時間内に千堂弘が居る場所へ辿り着ければ、施術自体を止められるか、途中で投げ出させることが可能なのだ。遼大が静かにスマホを取り出して、音も無く、スマホをタップしている。居場所の割り出しにかかっているのだろうと思った。「私たちは今、あなたがどこに居るのか、見当もついていないのよ? そうなると愛沢くるみを救い出すのに時間がかかってしまうわ」私がそう言うと、電話の向こうで千堂弘が笑う。『候補地がいくつかに絞れているのでしょう? 順番に当たったとしてもそれ程、時間はかからない筈だ』千堂弘は私たちの状況を把握しているように感じる。そしてそれを楽しんでいるようにも。「確かに私たちは候補地をいくつかに絞っているわ。それでもその過酷な施術に愛沢くるみ自身が耐えられるのかは、また別の話よ」私がそう言うと、電話の向こうが急にシンとなった。『検体が耐えられるかは別の話……』千堂弘がそう呟く。きっと千堂弘は分かっていない。人が生きようとするのは本能的な部分も大きいけれど。精神的に壊されてしまえば、それは生きる意味を失くし、生命力もそれに応じて落ちてしまう事もあるのだという事を。『面白い仮説ですね』冷たい声が響く。「仮説なんかじゃないさ、人間はそういう生き物なんだ」遼大がスマホを操作しながらそう言う。「今、目の前でお前がこうして俺たちと話しながら施術を準備をしているこの状況が、お前の大事な検体にどんな影響を与えるか、なんて考えた事も無いんだろうな」ほんの少しの蔑みが混ざる、その言い方に遼大の苛立ちが見える。電話の向こうでふっと笑う千堂弘が言う。『そこはご本人の生命力に賭けてみましょうか』カチャンというひと際大きい音がした後、千堂弘が言う。『そろそろ時間です。私はこれで。健闘を祈ります』電話がプツッと切れる。ツー、ツー、ツー
千堂弘は私たちが愛沢くるみを大事では無いのか、と聞いた。確かに愛沢くるみは私たちにとって大事な人間だ。それは愛沢くるみが今まで犯して来た罪を償わせる為で、愛沢くるみ自身が大事な訳では決して無い。私たちは愛沢くるみの持っているという特殊な血清に興味なんて無いし、それが手に入ったところで……そこまで考えて、私はある可能性を思い付き、ハッとする。千堂弘がここまで愛沢くるみにこだわっているのは、愛沢くるみからしか採取出来ない特異な血清があるからだ。そして私たちはそれを千堂弘の開発する薬品の一つの駒だと思っていた。でも恒久的にその血清を手に入れる為には愛沢くるみを生かしておく必要がある。だからこそ私たちはそれ程、焦ってもいなかったのだけれど。もしかしたら。私はそう思って、手元のメモ帳にメモを書く。サラサラとメモを書いて、遼大と賀神さんに見せる。メモを見た二人は互いに頷きい合って、私を見る。きっと二人も私と同じ考えなのだと確信する。「愛沢くるみは大事よ。彼女に何かあったら困るわ」私は冷静にそう言う。決して声の調子で私たちの思惑を悟られてはいけない。『そうでしょうね。じゃなければこうして私を追いかけて来る事の意義が無い』千堂弘は冷たい声でそう言い、笑う。(良かった、悟られてはいないみたいね)千堂弘は自分を追いかけて来る事の意義と、そう言った。千堂弘を追いかける事の意義なら、ごまんとあった。開発する事が許されないような薬品を開発し、それがEMSOの地下階に今まだ充満していて、浄化も出来ない。中和が出来ればそれが一番だけれど、それすら出来ずに地下階を封鎖しなくてはいけなくなっている。私たちが分析も分解も出来ない悪魔の薬 ―― レプリトールディザスター。開発したのは千堂弘の異母兄の千堂彰だけれど、千堂弘はその開発を引き継いでいる。だからこそ、愛沢くるみが必要なのだ。長年、その体に愛欲の女王を噴霧し続けてもなお、精神にも体にもほとんど影響の出ていない、その特殊な体質。愛沢くるみの体内で何年もの時間をかけて、生成された特異な“何か”。私たちはそれが何かと突き止めてはいないけれど、それがある以上、千堂弘が愛沢くるみを死なせる事は無い。そして。こうして自ら私たちに接触して来るのは、前回同様、私たちに愛沢くるみを助けさせる為だろう。そしてもう一つ。
私が振り返った事で遼大も賀神さんも私を見る。「どうした?」遼大にそう聞かれて私は言う。「千堂弘から電話よ」そう言うと遼大も賀神さんも驚く。「とにかく、話してみるわ」そう言って私は内線電話の向こうの事務員に言う。「外線に切り替えて」私がそう言うと事務員が外線へと切り替えてくれる。私は素早くスピーカーにする。「はい」私がそう言うと電話の向こうで何かの電子音と、冷たいカチャカチャという金属の音がする。『佐伯燈先生ですか?』ほんの少し笑いを含んだその声は紛れもなく千堂弘のものだった。「そうですが」そう言うと、千堂弘が言う。『急なお電話で驚かせてしまいましたね』私はその場に居た遼大と賀神さんと顔を見合わせる。「お気遣いどうも」私がそう言うと、電話の向こうで千堂弘が言う。『私の居場所は分かりましたか?』そう聞かれて私はその真意を探る。(ここは正直に分からないと言うべき? それとも……)そう思いながら三か所にまで絞った候補施設を見る。遼大が私の手に触れる。私は遼大を見る。遼大が首を振る。「いえ、まだよ」そう言うと電話の向こうで千堂弘がクスッと笑う。『そうですか、天才が三人も集まっているのに、まだ私の居場所が分からない、と』明らかな挑発だった。乗る訳にはいかない。そして今、この場に私以外に遼大と賀神さんが居る事を千堂弘は正確に言い当てた。(そういう意味では、千堂弘は推察に長けているのかもしれないわね)私はそう思いながら聞く。「それで、どうして電話を?」そう聞くと千堂弘が言う。『敵情視察ですよ、私の事をどこまで調べたのか、何が分かっているのか、そして何をしようとしているのかを正確に把握なさっているのかどうか』頭の中で様々な事が過って行く。千堂弘の目的は何?自分の居場所を把握されているのか、それを知る為?自分の目的をこちらが把握しているのかを知る為?「千堂」遼大が言う。『おや、高嶺総帥』千堂弘は遼大の事を高嶺総帥と呼んだ……それは八重樫一晟が遼大をそう呼んでいたからだろう。『ご機嫌いかがですか?』千堂弘は私たちを揶揄っているのだろうか。「機嫌はすこぶる悪いな。おまえのせいで」遼大が少し笑いながらそう言う。電話の向こうで千堂弘も笑う。『さすがは高嶺総帥だ。あなたは本当に抜け目がない』私のすぐ